2020年12月25日金曜日

実家に戻ることにした自分の備忘録1<逮捕された兄の話>

 それは北海道生活を謳歌していたある日。



あの頃は一人旅で出会った親切で家族思いのネパールの人々に感化されていたから「家族は大事に」というドラクエ4の作戦的な感じがデフォルトにあった。

だから最低月一ぐらいは実家に電話するようにしていた。



その日の仕事終わり、温泉に浸かりビールでほろ酔いで電話をした。

何気ない会話の中でいきなり母親がとんでもないことをぶっこんできた。

「A君(便宜上、長男をAとする)が逮捕されたの。」



急に理解できないことが降りかかってくると何も反応できなくなるように、このときも?が頭に浮かぶ余裕すらなく、しばらく固まってしまった。実時間にすれば2・3秒のことなのだろうが、自分の中で時がとまったかのようであった。



「捕まったってなんで?」

そう絞り出すのが精いっぱいだった。



彼は昔から変わった人ではあった。

親父に似て癇癪もちで、人付き合いが苦手。世間で「大人」と言われる年頃で引きこもり。仕事に行っていた時期もあったが、いろいろトラブルを起こして仕事に行ったり、辞めたりを繰り返していた。



自分は自分で自分のことに精いっぱいで、親の脛もかじりまくっているドブネズミのようなもんだったから、「人のこといえねぇな」と思っていたし、そこまで彼に対して興味もなかったからどういう生活をしていたのかもあまり把握はしていなかった。現に自分が高校を出てから10年以上は口を聞いた記憶もない。


ただ、彼は近年親父の農業の手伝いをしていて、今後は継ぐ予定、彼女も最近できて結婚するみたいなことを母親から聞いていた。



実際のところ、あまりピンとはきていなかった。いちばんは「あの長男が結婚」というのがまったくピンときていなかった。女と関わっているという姿が一個も想像できなくて。

その頃は自分もいろんな出会いがあって、世の中いろんな人がいるから彼に合う稀有な人もいるもんだなぁぐらいにしか思っていなかったし、実家のことを彼がやってくれるならありがたやありがたやとしか思っていなかった。



そんな長男が逮捕の一報に「家族を大事に」という作戦で臨んでいた自分は大型連休を使い一週間ほど帰省することにした。



結局彼が何で捕まったかざっくばらんにいうと、放火の容疑でということだった。



次回「家で起こっていたこと」

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